人材を活かす名社長対談シリーズ
東北イノベーションキャピタル株式会社 熊谷巧代表取締役社長
熊谷巧代表取締役社長
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武原誠郎イムカ株式会社社長
「東北から世界に通用するモノづくり企業を育てよう」という高い志により、バブル崩壊後の2003年10月、設立された東北イノベーションキャピタル株式会社。産学官の緊密な連携により、地域経済の活性化に着実な取組を見せている。「当社は投資だけでなく企業に役員、エンジニア、営業マン等を送り込み一緒に成長して行く」と語る熊谷巧社長に、その人材観を聞いた。
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東北のベンチャー企業への投資だけでなく、人材支援が重要

武原氏

今回、貴社と人材供給面で、イムカが業務提携できました事は、大変光栄に思っております。東北出身の優秀人材が関東、東海、関西等で大活躍しておられますが、郷土愛に燃えて、東北で実力発揮、更に自分を生かす人材を紹介致します。さて、熊谷社長はどのような動機から現在の会社を始められたのでしょうか?

熊谷氏

熊谷氏写真 私は東北大学経済学部を卒業し、東京で証券会社に入社し、調査・投資の仕事を33年間担当してきました。とくにバブル経済以降、日本経済が国際競争力を失ってきましたが、その原因はモノづくり企業が弱くなったことです。とくに地方の誘致企業が競争力を失った。中国へ生産拠点が移り、東北は雇用面で厳しくなりました。これは日本全体の問題で、人と、金が問題です。技術は大学などに存在します。それで2003年に仙台でベンチャーキャピタルを旗揚げし、おかげ様で翌年の04年3月には第1号のファンドを立ち上げることができました。社団法人の東北経済連合会も社団法人としては稀なケースですが出資していただき、東北を活性化しようというわれわれの想いが伝わったと感じています。その後、2号、3号と続けて立ち上げてていますが、投資だけでなく、さまざまな支援をしないとベンチャー企業は伸びません。そのなかで、重要なのはやはり人材だと痛感しています。東北の場合、知財、技術、マーケッティングなどの人材をいかに成長過程で入れていくかが鍵です。
今回、イムカさんと業務提携したのもこうした理由からです。

右手にロマン、左手にソロバン

武原氏
武原氏写真

これまで38社の投資先の主な業種についてお話し願えませんか?

熊谷氏

バイオ、ITもありますが、モノづくり系が基本です。東北のよさを活かすにはモノづくりで、しかも簡単に海外に移転するような業務内容でない、ハイテクでオンリーワン企業、その会社でしか製造できないオンリーワン企業を選び投資してきました。

武原氏

これまでの投資先で、どういった職種の人材が求められているのでしょうか?

熊谷氏

会社によって異なりますが、もう一段ステップアップするため社長の片腕となるCOO、CFO、そして技術力を高めるためにCTOです。そのほか販売力のある営業人材。例えば大手企業にいて人脈が豊かな人が求められます。企業によって求める人材は異なりますが、東北では人材が流動化していません。そこでイムカさんの力でUターン人材を採用できれば、ベンチャー企業にとっては心強いと思います。われわれは投資家に利益を得てもらうことも目的ですが、雇用の拡大も使命だと認識しています。右手にロマン、左手にソロバンです。

知財、マネジメント人材が求められる

武原氏
企業写真

社長は東京でもベンチャーキャピタルの経験をお持ちですが、東京と東北では差がありますでしょうか?

熊谷氏

あります。それ故にわれわれは啓蒙的なことを含めてモノづくり事業を展開していかなければ、東北から優良企業が育たないと、起業したときから覚悟を決めてきました。「能力、経験、人脈ある元気人材が必要だ」というのは切実な問題です。

武原氏

大学との連携も行っていますか。

熊谷氏

大学も社会貢献に熱心に取り組み始めていますので、東北大学の産学推進本部とは密接な関係をもって情報交換しています。東北大学は素材や半導体分野で世界的に高度な技術を持っており、研究室を訪問すると、民間にはない最新鋭の設備を保有しています。こうしたシーズをもう少し、民間に移転していけば多数の優良企業が育つと思います。われわれの投資先も約6割は東北大学発のベンチャーです。ただ、良いシーズを育てるマネジメント、知財などさまざまな優秀人材が必要です。

武原氏
企業ロゴ

当社の登録者のなかにも郷里の東北に帰って郷土経済を良くしたいという人がいます。

熊谷氏

日本経済の中での東北地域を考えると、そうした思い入れのある人でないと途中で挫折してしまいますね。ですから、そうした人は大歓迎です。

武原氏

他の地域に比べて東北の企業の特徴は何でしょうか?

熊谷氏

余り大風呂敷を広げないで実直にやることですね。われわれも10の力のある人は10主張して欲しいのですが、6とか、7ですね。東京より西に行くと6とか7が10になります(笑い)。

成長は経営者の人物による

武原氏

投資する際、企業のどのような点に着目されるのでしょうか?

熊谷氏

熊谷氏写真 まず、技術が優れていることです。そして、そのニューテクノロジーによる新製品に市場性があるか、どうかが問題です。投資先の最終ユーザーは情報家電、自動車関連企業が多いのですが、大企業に採用される場合、どこに特長があるかが重要です。例えば、省電力、耐久性など。そして経営陣ですね。これまで失敗した例では、投資前と投資後で経営者の人物像が変わってしまうケースがあります。ここをどう目利きするかです。私は企業の成長を決める8割は経営者の人物力だと思っています。後は、経営者にブレーキをかけるパワー人材が必要ですね。
われわれは38社に投資していますが、半分の投資先企業に役員として参画しています。これは他のベンチャーキャピタルにはないことだと思います。

日本の頭脳センターとして「チェンジ東北」

武原氏
武原氏写真

そうした東北のベンチャー企業に参加する人材の心構えを教えてください。

熊谷氏

忍耐強さでしょう。東北人の場合、心を開くのはUターンの人は別ですが、Iターンの人は、おいしい東北の酒を酌み交わしながら話すということが必要でしょう。Iターンの人を歓迎します。水も、空気も、食材も最高ですね。住宅も東京より安いですよ!
ベテラン中高年の方が来ていただけるといいですね、大歓迎しますよ。

武原氏

現在、中国や外国からの技術者を雇用している企業も多いのですが、東北の場合はいかがでしょうか?

熊谷氏

少ないですね。投資先にIT系企業が少ないことも理由でしょう。今、中国に進出したが、戻ってきている日本企業もありますね。研究開発の期間が短くなっていますから、地元で行いたいという理由からです。ハイテク企業といっても組み立てだけでは、すぐなくなるケースもあります。やはり、研究所を置いて欲しい。競争力を高めるための研究開発が企業にとって重要です。自前の研究開発スタッフを持っていることが大切ですね。
外国人の方を採用している企業もありますが、やはり、国籍よりも人物力次第ですね。

武原氏

全く同感です、人物本位ですね。貴社とガッチリ提携して、貴社の投資先企業の夢が実現する為に、「専門力」「人間力」「体力」ある「人物」の紹介を通じて、「モノ」づくり東北への「チェンジ」に、貢献したいと思います。本日は貴重なお話をありがとうございました。



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