人材を生かす名社長対談シリーズ
ザインエレクトロニクス株式会社 飯塚陽一代表取締役社長
飯塚陽一代表取締役社長
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武原誠郎イムカ株式会社社長
「人材を活かす社長シリーズ」はイムカのお得意様の社長をお招きし、イムカ社長武原と対談を頂くものです。
 私どもはクライアント様に優秀なご人材を紹介する事を生業としており、一番の喜びはご入社された方がその企業の中で活か
 され、キャリアUP,スキルUPが実現できた時です。それには社長の役割が一番重要と考えます。シリーズ一番手として、今(2007年6月現在)100人の社員で216億を稼ぎ出す半動体産業界の雄、ザインエレクトロニクス株式会社社長、飯塚哲哉氏をお迎え致しました。皆さんに対するエールも含んだ、盛りだくさんの内容になっています。
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キャリアオプションは豊かな国のものさし

武原氏

飯塚さんは、平成一八年秋の褒章にて「藍紋褒章」を受章されました。誠におめでとうございます。
飯塚さんは日本のベンチャー企業の中で、もっとも注目されている企業経営者として広く知られていますが、東芝を“脱藩”され、ザインエレクトロニクスを起業された際の動機を教えて下さい。リスクを背負ってでもやり抜こうとした設立当初の夢や志を是非お聞かせ下さい。

飯塚氏

ロゴザインエレクトロニクスを起業した時は、まだ青くさかったかもしれませんね(笑)
私は東芝時代の一時期、シリコンバレーに赴任していましたが、そこでもっとも感銘を受けたのは、アジアから来たエンジニアの夢の豊かさや、魅力的なキャリアオプションでした。キャリアオプション、つまり職業の選択肢の豊かさがその国の豊かさを測るものさしだと思います、その点から考えますと、日本は選択肢が非常に少ないと強く感じました。これは現在も変わっていませんが、偏差値だけで進学先や、就職先までもが決まってしまっています。キャリアを上手に開発している海外に比べ、日本はいったい何なんだ、という思いが強くなったことが“脱藩”の理由です。日本はいまだに人材の流動性が貧弱で、パラダイムの変化に対応できていません。だから、バブル崩壊後の“失われた十数年”は来るべくして来たのです。負けるべくして負けたのです。この状況は変わっていないどころか、少子高齢化の影響でさらに深刻化しています。

武原氏

“理科離れ”という大変残念な現象も起きていますね。

飯塚氏

確かに工学系学部の入学者の数は減っています。この状況は産業界にも責任があります。産業界が自分で自分の首を絞めているのです。

武原氏

長年のゆとり教育も原因のひとつではないでしょうか。

飯塚氏

その通りですね。

武原氏

理科系の学生が産業界よりも金融業界やファンドに魅力を感じている点も問題です。ものづくり産業の将来にとって決して良いことではありません。

飯塚氏

大学の偏差値にも変化が訪れています。かつて花形だった工学部系の学科が、いまではもっとも低くなっているようです。人材が金融に流れている現実を踏まえ、産業界はもっと魅力をアピールしていく必要があります。

企業の盛衰は人材ありき、産業界はもっと魅力をアピールすべき

武原氏
武原氏写真

採用時に良い人材を目利きするポイントを教えて下さい。

飯塚氏

良い人材を選ぶのは難しいですね。ポイントはいくつかありますが、熱意やガッツは重視します。また、経済性ばかり求める人は良い結果を出さないですね。

武原氏

ザインをどう成長させてきましたか。

飯塚氏

企業の盛衰は結局、人で決まると思います。まずは人ありきです。良い人材がいればビジネスチャンスはいくらでも見つかります。従業員もそうですが、ビジネスパートナーについても、良い人材と出会えるかどうかが重要です。

武原氏

確かにそうですね。ただ、人材にとっては“会社ありき”という側面もあります。 自分を生かすも殺すも、良い会社と巡りあえるかどうかが重要という意味です。両者をうまくマッチングさせることが当社の仕事ですが、エンジニアの方々は、殻に閉じこもらないで、どんどん相談に来て欲しいですね。一度しかない人生、チャンスを掴んでバラ色に燃焼させて欲しいです。

飯塚氏

客観的に見れば、お互い選び合っていると思います。良い人材ほどこちら、つまり会社を選んでいるのです。だから、会社が“選んでやっているんた”なんて態度をとるのはもってのほかです。 私は新卒採用のために、年間約四〇〇人以上の希望者と面談します。採用希望者全員と会っていますが、全員と面談する理由は、“よく知り合いたい”からです。それによって、当社と相性の良い人を見つけたいのです。 また当社は、インターンシップによる学生受け入れも行っています。すでに七期目になりますが、新規採用者の約二〇%はインターンシップでかつて当社を訪れた人が入社しています。インターンシップは、学生に企業の本当の姿を知ってもらうには大変良いシステムだと思います。当社がどんな仕事をしているか、自分の目で見てもらい、それを信頼度の高い口コミ情報として学校で広めてもらうことで、当社の真の姿を知ってもらうことができます。

公平な競争で日本の魅力をアップすべき

武原氏

外国人の採用についてはどうお考えですか。採用条件などは日本人と比べていかがですか。

飯塚氏

基本的には日本人と同じです。ガッツや熱意、論理的思考ができる人が望ましいです。我々は国籍を問わず、いい人材は時間をかけてでも採ろうというのがポリシーです。ただ日本は、海外の優秀な人材から見ると、必ずしも働く魅力のある国とは映っていないようです。優秀な人材に、真っ先に日本に来ていただけるように、日本の魅力をもっと上げなくてはなりません。

武原氏

日本の魅力を上げるための方策をどうお考えですか。

飯塚氏

まずは差別をしないことです。日本人でも外国人でも、公平に競争させることが大事でしょう。

武原氏

実際、企業において外国人への差別はあるのでしょうか。

飯塚氏

かつてはありました。外国人だけでなく、日本人ですら、海外の大学を卒業した人は差別を受けていました。日本の企業が長らく、指定した学校以外から人材を受け入れていなかったためです。しかし、こういった風潮も次第に変化しています。最近は学校のブランドだけで判断せず、人物本位で評価しするようになってきました。

長期的戦略重視の経営を!

武原氏

話題を変えますが、海外では大学だけでなく、企業からも数多くのノーベル賞受賞者が輩出しています。一方、日本は企業人のノーベル賞受賞は今のところ島津製作所の田中さんのみです。日本の企業は優秀な研究者を“無能化”させてしまっているのではないでしょうか。

飯塚氏

飯塚氏写真 企業だけが悪いとは思いません。積極的にチャンスを掴みにいかない個人にも問題があります。ただ、日本は大企業を崇拝する風潮がある割には、世界的な大企業といえる企業は少ないですね。これは株式の時価総額が世界規模で見て大きい企業が少ないという意味です。そうなってしまったのは、やはり先述のようにキャリアオプションが少ないからではないでしょうか。能力をフルに発揮できる場所はたくさんあるべきです。大企業とベンチャー起業が競争しながらものづくりを進めていく文化が日本にはありません。失敗してもやり直せる、人材の流動性がなくてはなりません。また、日本企業には長期的な戦略を重視した経営も必要です。日本は数年ぐらいの短いスパンの戦略は得意ですが、長期的視野の戦略は不得手です。日本の大手半導体メーカーはことごとくサムスン電子に負けましたが、大きな理由はそこだと思います。ネガティブな話ばかりしてきましたが、まずは地道にローカルなところから成功例を作っていくことが大事です。

武原氏

先述のように教育にも問題がありますが、理科離れ克服の妙案はありますか。

飯塚氏

企業をリタイアした人材を教育界で活用するというのはどうでしょうか。熱意のある社会人が経験を生かして、理科・サイエンスの面白さを教えることは非常に良いことだと思います。かつて、サイエンスオリンピックでは日本が強さを誇っていましたが、今は韓国や中国にその立場を奪われています。大変嘆かわしいことです。日本のサイエンス復活のためにも、是非とも企業経験者の活用は必要だと思います。

武原氏

日本のエンジニア教育にも課題があります。日本の大学は一般教養を十分教えないうちから専門課程に進ませていますが、これでは海外に出たときに、海外と日本の文化の違いを海外の人に説明できません。これは大変恥ずべきことだと思います。これも、学校教育に戦略性がないことが原因ではないでしょうか。

飯塚氏

理系と文系に分けるのも原因だと思います。国際性を身に付けるためには、島国であることはネックです。若い時期に海外に出ることは人材育成の上で大変好ましいことですので、大学の単位の一部を海外で取得するなどの取り組みも必要だと思います。

武原氏

当社は、海外の大学の日本における校友会をサポートし、当社主催でパーティーなども行っています。こうした場を是非海外との人材交流に活用していただきたいです。また、日本の産業界のためにも、海外から優秀な人材をどんどん招き入れるべきです。かつて飛鳥文化はそのようにして花開いたのです。

飯塚氏

そうですね。米国のように、日本も優秀な人材を率先して入れるべきです。その場合発生する日本人との競争も、日本人は覚悟すべきです。

能力が旬なうちに生かせる場を求めるべき

武原氏

最後に、日本のエンジニアの方々へのメッセージをお願いします。

飯塚氏

能力が旬の時期にこそ、殻を破って勝負に出るべきです。ひとつのところにとどまるリスクは大きく、気付かないうちに足腰が立たなくなっている可能性があります。能力が旬なうちに、それを生かせる場を求めるべきです。

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